株式

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総説[編集]

株主権[編集]

株式平等原則[編集]

種類株式[編集]

株式の譲渡[編集]

株式会社では、株式の譲渡は原則自由とされている(127条)。これは、持分会社と異なり、株式会社では株主の退社が認められていないからである。株主の投下資本の回収のため、株式の譲渡は自由に行えるようにする必要がある。

株式の譲渡方法は、株券不発行会社と株券発行会社で異なる。

株券不発行会社では、株式の譲渡は当事者間の意思表示によって効力を生ずる。これは民法第176条の原則どおりである。一方、株式が譲渡された結果として株主たる地位を会社その他の第三者に対抗するためには、株主名簿への記載が必要である(130条1項)。株主名簿への記載は、譲渡人と譲受人が共同で会社に対して請求しなければならない(133条2項)。

一方、株券発行会社では、意思表示のほかに株券の交付が行われなければ、株式譲渡は効力を生じない(128条1項)。株券発行会社では、株券の占有によって株主たる地位が推定されるからを有するから、譲受人は株式を所持していることをもって株主たる地位を譲渡人以外の第三者に対抗できる。ただし、会社に対して対抗するためには、やはり株主名簿への記載が必要である(130条2項)。株主名簿への記載は、譲受人が単独で、株券を提示して行うことで請求できる。

上場会社では、株式保管振替制度が適用されるから、株式の譲渡は口座間の振替によって行う。振替は当事者間の意思表示によって行われることになる。、株主以外の第三者に対して特に有利な価額で割り当てる場合は、

自己株式の取得[編集]

株式会社は、法律が特に定める場合に限り、自己株式を取得することができる(155条1号~13号)。以下、株主総会決議によって自己株式の有償取得をする場合(155条3号、156条1項)について説明する。

自己株式の取得は、財源上は会社の剰余金の処分にあたる。剰余金の処分は、自己株式取得のほか、株主への配当、内部留保、資本金の増加、準備金の増加などに充てることができる。いずれも、株主の自益権に関わる事項であり、株主総会の決議を要する。(450条451条452条453条など)。また、本来株式会社では出資金の返還は認められていないが、自己株式の取得によって、一部株主に対してのみ出資払い戻しをすることになるので、株主平等原則に反する恐れがある。このような理由から、自己株式の取得には手続規制財源規制が課せられている。

手続規制として課せられるのは、先述の通り、原則として株主総会決議を要するという点である(156条1項)。ただし、市場取引による自己株式の取得については、取締役会設置会社においては取締役会決議でなすことを定款に定められる(165条2項)。また、特定の株主から取得する場合は、株主総会の特別決議が必要である(160条1項、309条2項2号)。この特別決議には、当該特定の株主は議決権を行使できない(160条4項)。

自己株式の取得における財源は、分配可能額を超えることができない(461条2号)。これは、会社債権者を保護するための規定である。財源規制に違反した場合には、自己株式を譲渡した株主および取締役等は、会社に対して交付金を返還する連帯責任を負う(462条1項)。ただし株主は善意であれば責任を負わない(463条1項)。

自己株式と株主権[編集]

株式会社は、自己株式については自益権も共益権も行使できない。まず自益権について、会社は自己株式の剰余金の配当が受けられない(453条)し、残余財産分配請求権もない(504条3項)。次に共益権について、会社は自己株式の議決権を行使できない(308条2項)。

また、会社は自己株式について新株割当を受けることもできないし(202条2項)、自己新株予約権も行使できない(280条6項)。

子会社による親会社株式の取得の禁止[編集]

子会社は親会社の株式を取得することを禁止されている(135条1項)。親会社取締役は子会社の意思決定に関与できるから、これが認められると親会社取締役が子会社を介して親会社の株主総会の意思決定を左右できてしまうからである。なお、例外的に子会社による取得が認められる場合もあるが(135条2項)、その場合、子会社は相当の時期にその有する親会社株式を処分しなければならないとされている(135条3項)。

株式の分割・併合[編集]

株式分割[編集]

株式会社は、発行済株式を分割することによって、純資産を増加せずに株式の数だけを増加することができる(183条1項)。これを株式分割という。株式分割には株式の流動性を増すメリットがある。

株式分割をするには株主総会決議が必要である。ただし、取締役会設置会社においては取締役会決議でできる(183条2項)。

株式分割と同様の効力を有するものとして、株式の無償割当て(185条)がある。無償割当てをなす場合の手続き上の要件も株式分割と同様である(186条3項)。

単元株[編集]

募集株式の発行[編集]

株式は、資金調達の一手段として、募集株式を発行することができる。募集株式の発行には、一方に株主の支配権比率の低下という問題があり、他方に資本調達手段としての機動性の要請がある。そこで利害調整のため会社法は、株主割当の場合と第三者割当の場合、第三者割当については時価発行と有利発行の場合に分けて詳細な規定をおいている。

株主割当[編集]

株主に募集株式を引き受ける権利を与える場合には、株主の支配権比率には影響を及ぼさない。そこで、公開会社においてはこれを取締役会決議で行うことができる(202条3項3号)。非公開会社の場合には原則として株主総会決議によらねばならないが(202条2項4号)、定款で取締役または取締役会の決議にゆだねる旨を定めることができる(202条3項1号2号)。

第三者割当[編集]

時価発行[編集]

第三者に対する時価発行の場合は、株主の支配比率は低下するが、株式の時価は維持される。そこで、公開会社にあっては、発行可能株式総数の枠内であれば第三者割当を取締役会決議で行うことができる(201条1項)。

有利発行[編集]

第三者に対する有利発行の場合は、株式の時価が低下し、株主の利益を害する可能性がある。そこで、株主以外の第三者に対して特に有利な価額で割り当てる場合は、募集事項の決定は、公開会社であっても、株主総会の特別決議によらなければならない(201条1項、309条2項5号)。また、取締役は株主に対して、有利発行をする理由を説明しなければならない(199条3項)。

株券[編集]

株券は、株式を表章する有価証券である。株券の発行によって株式が生まれるわけではないので、株式は非設権証券である。

株券の善意取得[編集]

株券の占有者は、株式についての権利を適法に有するものと推定される(131条1項)。そして、株券を交付された者が善意無重過失であれば、交付したものが株主でなくても、株式についての権利を善意取得する(131条2項)。

株券の紛失があった場合、この善意取得の可能性がある。そこで、会社法は株券喪失登録制度を置いている。株券を喪失した者は、会社に対し、株券喪失登録簿に登録することを請求できる(223条)。株券喪失登録簿に登録された場合、登録から1年で株券は失効し(228条1項)、株券喪失登録者に株券が再発行される(228条2項)。しかし、喪失登録から1年以内に、当該株券の所持者が喪失登録の抹消を請求すれば、抹消される(225条1項)。

外部リンク[編集]

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